コンプライアンスとは「法令遵守」を意味しています。しかし、「法令」というのは法律だけ守ればいいわけではありません。企業のコンプライアンスとは、就業規則や社内規程等に記載されている社内のルールや、法律では縛られてはいないものでも一般的に守るべきルール、ビジネスマナーなど、幅広いルールを指しています。
コンプライアンスは「企業価値」といわれています。これを徹底することにより企業価値が高まり、会社の「信頼」にもつながります。そのために必要なのは社員や管理職に対するコンプライアンス研修です。ビジネスマナーからはじまり、企業のコンプライアスがどういうものかを社員全員に浸透させることが重要です。
今回は、企業が行うべきコンプライアンス研修の目的とテーマ例についてお話しします。
コンプライアンス違反が引き起こすものと企業コンプライアンスの目的
2000年に入ってから、企業の「コンプライアンス」が強化され始め、多くの企業でコンプライアンス研修などが実施されてきました。しかし、コンプライアンス違反によっておこる企業の不祥事は減少する気配がありません。
2019年にも様々な不祥事が報道されました。
大手芸能事務所に所属する芸人が事務所を通さない営業により、反社会的勢力が開催するパーティーに参加していた事実が発覚し、同社のコンプライアンスに関する問題点が浮き彫りになったことで、世間を賑わせました。
また、12月には、神奈川県庁のHDDのデータ消去を請け負っていた株式会社ブロードリンクの元従業員が、個人情報を含む行政情報が記録されたHDDを不正に持ち出し、オークションサイトで転売していたことが発覚。「世界最悪級」といわれる個人情報流出事件に発展しました。(株式会社ブロードリンク<当社管理下にあるハードディスク及びデータの外部流出に関するお詫び>)
同従業員は懲戒解雇され、のちに窃盗容疑で逮捕されました。本件が発覚したことにより、同社のずさんな管理体制が明らかとなり、現在も転売された媒体の回収を行っています。また、同社の社長は辞任する意向を示しています。
これらの不祥事だけではなく、日々、さまざまなコンプライアンス違反に関する報道が流れています。1つでも不祥事が発覚すると、次々と過去の不祥事なども明らかになっており、企業は、今まで以上にコンプライアンスの徹底が求められる時代になっています。
企業コンプライアンスの最大の目的は、こうした事件が起こらないように、社員全員が社会人としての基本的なルールを身に着けて、コンプライアンス違反をなくすことです。
コンプライアンス違反の種類
こうした状況のなかで、コンプライアンスを徹底するための一般社員に向けた研修は非常に重要なものとなります。一般的なマナーやビジネスマナーも含めて、受講者一人一人に理解してもらうための研修では、テーマが重要となります。そのテーマを決める前に、コンプライアンス違反の種類や違反した企業がどうなるかを知る必要があります。
コンプライアンス違反の種類は様々ですが、一般的には以下のようなものになります。
<主なコンプライアンス違反>
- 個人情報の流出
- 反社会的勢力との関わり
- 粉飾決算などの不正会計
- 偽装
- 不正受給
- 過酷な労働環境(過労死など)
- セクハラ、パワハラ、マタハラなどのハラスメント行為
- 脱税
- インサイダー取引 など
ここには記載したもの以外にもコンプライアンス違反に当たるものはたくさんあります。
こうしたコンプライアンス違反があった場合、大企業でも中小企業でも大きなダメージを受けます。
周囲からの信頼がなくなり、企業のイメージダウンにつながることで、顧客や消費者が離れて売上が減少し、最終的には、会社の経営が難しくなります。倒産するケースも少なくありません。
2018年度にコンプライアンス違反による影響で倒産してしまった企業は233件となっており、企業の倒産件数は年々減っているものの、コンプライアンス違反が原因となって倒産する企業の割合は増えています。
引用元:帝国データバンク「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2018年度)」
コンプライアンス研修の目的とテーマ例
コンプライアンスに対する意識の啓蒙として実施するコンプライアンス研修では、コンプライアンスの基礎知識からコンプライアンス違反の事例などを用いてコンプライアンスに対する意識を高めることが大切です。
コンプライアンス研修をすることが目的ではなく、コンプライアンスの重要性を理解して、常に意識して行動するような社会人に育成することが目的となります。
しかし、コンプライアンスの対象はたくさんあるので、自社の業態などを考慮して、テーマの優先順位を決めて研修を行うことが重要です。専門の講師を派遣して研修を行ってもいいかもしれません。
下記、コンプライアンス研修のテーマを一部紹介します。
反社会的勢力排除
- 反社会的勢力とかかわりを持たない。→新規や既存の取引先企業などに反社会的勢力との関わりがないかをチェックする。
ハラスメントの防止
- セクハラ・パワハラ・マタハラを防止する。
個人情報保護について
- 個人情報が含まれるデータ等は施錠できる場所へ保管する、パスワードを設定する。
- 廃棄の場合は完全に抹消する。
USBメモリの使用について
- 企業の規則に基づき使用する。(個人所有は禁止、会社所有は許可など)
労働管理
- 労働時間と休日、時間外労働は労働基準法に基づく。年に1回は健康診断を受診する。
SNSの利用
- 業務に関する情報の発信、個人情報や顧客情報、機密情報、誹謗・中傷、公序良俗に反する可能性のある情報の発信は禁止。
インサイダー取引
- 業務中に取得した未公表の自社や他社の経営、財産等に関し、重要な影響を及ぼす情報を元に、インサイダー取引は行ってはいけない。
内部通報制度の設置
- 社員のコンプライアンス違反を目撃した場合、会社に匿名または実名で相談・通報する制度。通報者のプライバシーは守られる。
まとめ
コンプライアンスの徹底は、会社が研修を行うだけではなく、社員ひとりひとりが意識して行動をしなければいけません。企業の信頼を失うことになり、自分の人生だけではなく、会社の将来にも影響が出ることを忘れずに、社内でコンプライアンスを徹底していきましょう。