パソコンで位置情報を利用する目的
パソコンで位置情報をオンにしていると、位置情報を利用してさまざまなサービスや体験が可能です。
例えば、Google MapやYahoo!などの地図アプリやナビゲーションでは、位置情報を使用してレストラン・コンビニ・病院・駅・渋滞情報などさまざまなサービスを利用することができます。天気予報アプリでは位置情報から現在の位置を考慮した天気予報を確認することができます。位置情報はセキュリティ機能としても活用されていることも多く、テレワークなどパソコンを持ち出して仕事をする方が、パソコンを紛失した場合に位置情報を使用して探し出すことも可能です。
今回のコラムではWindowsパソコンで位置情報を確認する方法と、位置情報が確認できない場合の原因と対策について考えてみたいと思います。
パソコンで位置情報を確認するには
パソコンで位置情報を特定して確認するためには、位置情報が測位されている必要があります。測位とは位置を測ることの総称であり、位置を決定する方法のことです。
Windows10やWindows11のパソコンで位置情報を測位するためには、Windows 位置情報サービスを利用する必要があります。
Windows 位置情報サービスとは、Microsoft Windowsに組み込まれているサービスであり、Windowsパソコンの位置情報を測位して場所を特定するための機能です。
〉〉〉 [Windows 位置情報サービスとプライバシー] Microsoft サポート
パソコンで位置情報を確認
パソコンで位置情報を確認する設定をオンにする必要がある
パソコンの位置情報を利用する場合には、必ず位置情報の機能を有効にする必要があります。
Windows 位置情報サービスをオンに設定すると、パソコンに搭載されたGPS、Wi-Fi、IP アドレス、携帯電話基地局などを利用して位置を測位し、OSやアプリケーションを通してユーザーが位置情報を活用できるようにします。Windows 位置情報サービスは設定をいつでもオン・オフを切り替えることができます。
「Windows 位置情報サービス」を利用して、位置情報をオンにする具体的な設定方法は、以前のコラムで紹介していますので、必要に応じて参照ください。
〉〉〉パソコンの位置情報を特定する仕組みと情報漏洩対策のご紹介
位置情報を確認する設定をオンにする
パソコンの位置情報を取得できない原因
Microsoft社の「Windows 位置情報サービスとプライバシー」の技術情報を確認すると、位置情報設定や測位について下記の記載がありますので引用します。
位置情報設定を有効にすると、Microsoft 位置情報サービスは、グローバル 測位サービス (GPS)、近くのワイヤレス アクセス ポイント、セル タワー、IP アドレス (または既定の場所) を組み合わせて使用して、デバイスの場所を決定します。 デバイスの位置を特定できる精度はデバイスの性能によって異なり、厳密に特定できる場合もあります。
しかし、Windows 位置情報サービスをオンにしても、位置情報を確認できない場合もあります。
パソコンの位置情報を取得できない理由として考えられる原因や理由を幾つか考えてみたいと思います。
パソコンを屋内で利用しているから
パソコンは屋内で使用されることが多いデバイスです。スマートフォンやカーナビは屋外で利用することも一般的ですが、パソコンはオフィス・自宅・電車内・カフェなどの屋内が現実であり、スマートフォンなどと比較すると、パソコンの位置情報は一般的に屋内測位が必要であることが理解できます。
GPSで位置情報を測位できていない
GPSはグローバルポジショニングシステムの略であり、全地球測位システムとも呼ばれます。
普段の生活の中で1番有名な位置情報を測位するシステムです。GPSを受信できれば精度が高く非常に便利です。
しかし実際にはGPSを搭載しているパソコンはあまり多くありません。パソコンメーカーでGPS搭載のモデルはありますが、全てのモデルではなく一部のモデルに限られることが一般的です。
iPadやAndroidなどのスマートフォンには当たり前のようにGPSが搭載されていますが、パソコンではまだまだ少ないのが現状なのです。
WWAN(Wireless Wide Area Network)モデルやオプションでは、携帯電話網によるセルラーネットワークを利用してインターネット接続ができるように設計されており、多くの場合これに付随してGPS機能が搭載されています。
パソコンにGPS搭載されている場合は、測位しやすくするためにGPSをONにして利用しましょう。
パソコンにGPSが搭載されているか、どのようなセンサーがあるのかなどは、パソコンメーカーの公式Webサイトで型番を確認するか、製品マニュアルなどで搭載されているかを確認してください。
しかし、GPSをONにしても位置情報が測位できないことも多くあります。理由の1つは、前述した屋内でパソコンを利用しているという事があります。
GPSで測位するためには、GPS衛星と通信できる広い場所等で、複数の衛星から測位する必要があるのです。信号を受信するには、空が見える場所であることが重要であり、屋内や高層ビルの間では受信が難しいのです。
また、スマートフォンには搭載されていることが一般的な加速度センサー、ジャイロスコープやA-GPS(Assisted GPS)などは位置情報を補完できますが、パソコンには補完機能が搭載されていないことが一般的であり、パソコンはスマートフォンなどより位置情報を測位するための機能などが劣っています。
携帯電話基地局を利用していない
携帯電話やデータ通信デバイスがインターネットや音声通話サービスに接続するために使用される無線通信ネットワークとしてセルラーネットワークがあります。
セルラーネットワークは、いわゆる携帯電話によるネットワークであり、地理的に分割された「セル」と呼ばれる小さなエリアに分かれており、それぞれのセルが携帯電話基地局によってカバーされています。
パソコンでセルラーネットワークを利用する方法があり、前述したWWANモジュールやSIMカードなどが必要となりますがセルラーネットワークに接続することが可能です。セルラーネットワークによる位置情報の測位では、複数の携帯電話基地局からの信号強度を測定して、それらの情報を基に三角測量を行うことで位置を推定され、精度も比較的高いとされています。
携帯電話網を使用して位置を特定する方法は、インターネット接続が必ずしも必要ではありませんが、精度の高い位置を得るためにはインターネットに接続する必要があります。 前述の通り、WWANモデルなどの携帯電話の電波を受信できるパソコンを使用していないと、位置情報を測位できないのがデメリットではあります。尚、スマートフォンに搭載されている機能であるテザリングを利用することでセルラーネットワークにより測位できる場合がありますので、テザリングできる方は、試してみるのも1つの手段でしょう。
Wi-Fiを利用していない
最近のノートパソコンは無線LANを使用することができます。位置情報を測位するための一番の現実的な解はこの無線LAN(Wi-Fi)による位置情報の測位になると思います。
無線LANは屋内で利用することが一般的であり、パソコンの位置情報はWi-Fiで測位することが現実的には多いと考えられます。
Wi-Fiを利用している場合、パソコンは周囲のWi-Fiアクセスポイントのビーコン信号を用いて位置を推測します。MicrosoftやGoogleやAppleなどの大手企業は、位置情報データベースを構築していて、Wi-FiのアクセスポイントのMACアドレスとその地理的位置を関連付けて位置情報が分かるようになっています。
特に都市部や商業施設など、たくさんのWi-Fiアクセスポイントが存在する場所では、位置情報サービスが複数のアクセスポイントからの情報を利用して比較的正確な位置を特定できます。逆に人が少ないような地域などでは、アクセスポイントが少ないまたは無い場合もあるため測位が難しくなり、数百メートル単位で誤差が出ることもあります。
GPSなどよりは劣りますが、おおよその位置情報は測位することが可能になります。
尚、Wi-Fiアクセスポイントの電波が届く場所であれば、アクセスポイントが位置情報データベースと通信する必要があることから、インターネットに接続することで位置情報を測位できるようになると考えられます。
閉域ネットワークに接続されている
閉域ネットワークとは、その名の通り閉じられたネットワークのことです。例えばインターネットに接続することができず特定の範囲に隔離されたネットワークも閉域ネットワークです。
位置情報はインターネットから位置情報データベースと照合して位置を推定することで精度が向上するため、閉域ネットワーク内では測位が行えません。
仮にGPSを搭載しているパソコンであっても、前述の通り、パソコンが利用される環境が屋内であることが一般的であり、位置情報を測位できる可能性は残りますが、現実的な運用を想定すると、閉域ネットワークにおける位置情報の測位は困難と考えられます。
IPアドレスで測位している
IPアドレスから位置情報を測位することも可能です。しかし、結論としては、IPアドレスからの測位は精度が低いため現実的には役に立ちません。測位できても都市単位や地域単位の大まかな位置情報になります。
IPアドレスによる測位は、パソコンがインターネットに接続している場合や、インターネットサービスプロバイダー(ISP)による位置情報提供などがあります。
インターネットサービスプロバイダーは、顧客のIPアドレスとその地域情報を管理しています。この情報を基に、IPアドレスから大まかな地理的位置を特定できます。VPN等を利用していると測位ができても意味の無い位置情報になる可能性もあります。
OSやソフトウェアの不具合やその他の理由
設定・環境・場所などに問題が無いのにも関わらず、位置情報が測位できない場合は、OSやソフトウェアの不具合が原因である可能性も考えられます。
OSやアプリケーションを最新バージョンにアップデート、PCの再起動やソフトウェアの再インストールなどをすることも切り分けをしてみることも重要であり、各メーカーが位置情報に関連するドライバーやファームウェアを提供している場合もありますので、この辺りも確認ポイントのひとつとなります。
その他の理由として、位置情報には誤差がありますので、誤差が大きい場合には、位置情報が測位できていたとしても意味が無いと判断して、その位置情報を採用せず、アプリケーションなどは位置情報を表示しないことなども考えられます。
パソコンで位置情報を取得するためのベストプラクティスとは?
ここまでの考察をまとめると、パソコンで位置情報の特定をしやすくするためのベストプラクティスは以下のようになります。
各種位置情報を測位するための設定が有効になっていることを前提とします。
- WWAN(ワイヤレスWAN)モデルのGPS搭載パソコン
- パソコンに搭載されるセンサーにとって測位しやすい場所にデバイスがいる
- セルラーネットワークと通信ができるSIMカードを利用している
- 携帯電話基地局の携帯電波がしっかりと届く
- Wi-Fiのアクセスポイントからの電波がしっかり届く
- OSが正常に起動しており、インターネットに接続できる
位置情報を取得するためのベストプラクティス
まとめ
パソコンが位置情報を取得するための方法や、取得できない原因について考察してみました。
このコラムで記載したとおり、パソコンが精度の高い位置情報を測位するためには幾つもの課題があるのが現状です。
普段の生活でスマートフォンやカーナビを利用していると、当たり前のように位置情報が測位できているので、なぜパソコンでは位置情報が取得できないのか?できづらいのか?となり実際にさまざまな点を考慮すると、大きな落し穴があるのも事実です。
最近では日本の位置情報を測位するシステムである、みちびき(準天頂衛星システム)もありアップルのiPhoneなどは対応してきています。準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムでは、安定した高精度測位を行うことを可能とする衛星数を確保することができます。 今後時代が進むことで、より高精度に測位できたりセンサーも増えたりすると、パソコンにおける位置情報の測位も向上していくと考えられます。
この記事を書いた人
ワンビ株式会社
セキュリティエバンジェリスト 井口 俊介
高等専門学校卒業。大手企業のミッションクリティカルシステムのアカウントサポートを担当。
その後プロジェクトマネージャーにてITインフラの導入に携わる。
2020年からワンビ株式会社でエンドポイントセキュリティのプリセールスとして従事。営業技術支援、セミナー講演、コラムの執筆など幅広くセキュリティ業務に携わる。