少子高齢化により、今後生産年齢人口が大幅に減少していくことが予測される日本。
その対策の一環で近年、政府は子育て中の女性や高齢者の社会進出を促すべく、女性活躍推進法や働き方改革などを推進してきました。
その結果、「ワーキングマザー」や「ワーママ」などの言葉も一般的になってきました。
しかし、現状はワーキングマザーが働きやすい環境とは言えない職場が多くを占めているのではないでしょうか。
従来の働き方を大幅に見直す「働き方改革」が求められている昨今、今回は企業の管理職の方へ向けて『ワーキングマザーの“悩み”から考える「働きやすい職場」』について考えてみたいと思います。
専業主婦とワーキングマザー~性別役割分担意識の変化~
かつての日本では仕事は男性が行い、女性は家庭を守るという風潮がありました。
しかしその風潮は年を追うごとになくなりつつあります。下図は総務省による育児をしている女性の有業率です。
※平成 29 年就業構造基本調査結果要約を加工して作成。
図でわかるように有業率は全年代的に増加傾向。また、同調査のデータでは、育児をしている女性の有業率が全国平均64.2%に達したことがわかっています。多様な働き方がある現代において、”子育て中も働く”というスタイルは現代のママたちのメインストリームになりつつあると言えるでしょう。
ワーキングマザーが抱える悩みや問題~女性が活躍する時代というけれど~
増加傾向にあるワーキングマザーですが、同時に様々な悩みも抱えています。
まじめワーキングマザーであれば仕事と子育ての両立を頑張りすぎてしまったり、子供がいなかった頃との環境の違いに戸惑ってしまったり、最悪のケースではうつ状態になってしまうことも…。
問題は多種多様かつどれも本人への負荷が大きいものですが、今回はその中から3つの問題点を見てみましょう。
罪悪感を抱く
保育園・幼稚園の送迎によるフレックス出退社や時短勤務、子供のイヤイヤ期による遅刻、急な発熱による欠勤の他、周囲は残業が必要な仕事量にもかかわらず自分だけが定時退社をすること等で罪悪感に苦しんでしまう状況。
近年、様々な調査で6割近くのワーキングマザーが何らかの罪悪感をもって働いていることがわかっています。また、親が外で仕事をすることが子供の成長に悪影響であるとか、傷つくのではないかと考え子供や周囲に罪悪感を抱くケースも多くあります。
マミートラックに陥る
マミートラックとは産休を経て復職後の女性社員に対し、残業等ができないことから軽作業や簡単な仕事ばかりを割り当て、キャリアアップの階段を登らせずに同じ仕事(=トラック)を周回させ続けること。
復職直後に人事異動を言い渡され、本人の希望ではない軽微な仕事をさせられたり、閑職に追いやられて退職に至るケースも珍しくありません。本人のキャリア面・収入面で悪影響であり、会社の人材活用という面でも良い影響があるとは言い難いでしょう。
時短勤務でもフルタイムと同じ仕事量を与えられる
時短制度が存在するものの形だけで、与えられる仕事量は変わらず残業せざるを得ないという状況。
マミートラックの真逆のような状況ですが、家庭内でのコミュニケーション不足を招き、肉体的・精神的疲労が蓄積すればうつ等のより重篤な問題に発展する可能性もあります。
働き方改革による問題の改善~テレワークの導入がワーキングマザーに何をもたらすか~
様々な問題を抱えているワーキングマザーですが、働き方改革を行うことでそれらの問題を軽減することが可能です。
例えば、テレワークの導入です。
働き方改革の大きな施策のひとつであるテレワークは、在宅で業務を行えるなど、時間や場所を選ばずに業務を行うことができるため働き方改革の目玉として脚光を浴びています。
テレワークの導入では下記のメリットがあると考えられます。
【テレワークの導入により得られるワーキングマザー視点のメリット】
- 通勤時間が無くなることで自由時間=子育てに使える時間が増える
- 職場・子供・世間に対する罪悪感がなくなるまたは軽減される
- フルタイムで働くことが可能になった結果十分な戦力と判断され、マミートラックに陥りづらくなる
- 家事・育児・仕事の三立の可能性が拡がる
上記以外にも多数のメリットが考えられます。
なお、今回、当コラム作成にあたり「テレワーク導入の結果、ワーキングマザーが抱えている特定の問題が解決されたか」を示す明確なデータは確認できませんでした。しかし、日本マイクロソフトではテレワーク導入後、女性の離職率が40%低下しています。
参照元:平成29年度総務大臣賞受賞企業(総務省ホームページ)
テレワーク導入が女性視点でも多くのメリットがあることの裏付けとして、この数字は十分と言えるのではないでしょうか。
ワーキングマザーが働きやすい職場とは~働きたい人が働ける社会へ~
“働き方改革”はワーキングマザーが抱えている問題の改善策の一つになり得ますが、恐らくどの選択肢も改善策の域を出ないでしょう。
根本的な問題解決のためには、第一に管理者によるワーキングマザーへの定期的なヒアリングと、第二にストレスを抱えやすい状態であることを職場で理解し、互いに助け合っていくことが重要と考えられます。
2019年、時代の変化に合わせてより柔軟な思考を持ち、社員の「働きたい」に力強く応えられる会社が求められているのではないでしょうか。