女性が活躍する企業の取り組み

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第2次安倍内閣の最重要課題のひとつである「すべての女性が輝く社会づくり」が推進されて数年が経ちますが、女性が活躍する企業の取り組みは、現在、どのようになっているのでしょうか。

女性の仕事に関する考え方の変化

内閣府が発表した女性が職業を持つことに対する意識の変化の調査では、「子供が出来てもずっと職業を続ける方がよい」と答えた人が、1992年には、女性が26.3%、男性が19.8%との結果が出ましたが、2016年は、女性が55.3%、男性が52.9%と倍以上に増えています。

就業率に関しては特に女性の上昇が著しく、このことから女性が職業を持つこと、また、子供が出来ても職業を持つという意識が一般的になってきたと言えるでしょう。通勤時に見かけることが多くなったマタニティーマークは、女性が以前と比べ、結婚・妊娠しても働くことが可能になった象徴ではないかと考えられます。

(引用:内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 令和元年版 女性が職業を持つことに対する意識の変化

また、昔であれば当たり前だった「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えにも変化が見られます。「どちらかといえば反対」「反対」という女性の意見が昭和時代と比べると、倍以上増えていることが分かります。共働き世帯が増加し、結婚後も女性が仕事を続けることが当たり前になってきたことも理由のひとつでしょう。

(引用:内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 令和元年版 女性が職業を持つことに対する意識の変化

女性活躍推進法

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律である「女性活躍推進法」が2015年に公布されました。

この法律は、企業に女性活躍推進の取り組みをしてもらおうとする法律であり、「自社の女性活躍に関わる状況を把握し、行動計画を策定すること」を求められています。

(引用:厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ

女性活躍推進法に基づき、企業が行う取り組み

①一般事業主行動計画の策定・届出

<ステップ1> 自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

採用した労働者に占める女性労働者の割合、・男女の平均継続勤務年数の差異、・労働時間の状況、・管理職に占める女性労働者の割合等を把握し、課題分析を行う。

<ステップ2> 一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表

ステップ1を踏まえて、(a)計画期間、(b)数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し、労働者に周知・外部へ公表する。

<ステップ3> 一般事業主行動計画を策定した旨の届出

一般事業主行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届出を行う。

<ステップ4> 取組の実施、効果の測定

定期的に、数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取り組みの実施状況を点検・評価。

②女性の活躍に関する情報公表

自社の女性の活躍に関する状況について公表する情報を選択し、求職者が簡単に閲覧できるように公表。

この取り組みは、企業だけでなく、国や自治体、病院などに義務付けられています。なお、2019年6月5日に法律が改正され、情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が以前までは301人以上からでしたが、101人以上に拡大されました。

(参照:女性活躍推進法が改正されました

今までは大企業がメインとなり力を入れていた政策ですが、中小企業にも女性の活躍推進が求められています。

女性が活躍し始めているこの時代でもまだまだ活躍できていない状況がある

下記の図は、女性の就業者の割合と管理職に就いている割合を国別に比較したものです。女性の就業率は44.2%と他の国と比べ、差はありませんが、管理職に就いている割合は13.2%と他の国と比べて低い水準となっていることが分かります。

(引用:内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 令和元年版 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)

実際に数字上では、女性が活躍できる社会になってきていることが分かりますが、まだ多くの課題が残っています。

女性が活躍出来る体制が整っていない企業もあります。企業が、女性が活躍する職場を作り上げてく上で、女性社員の産休・育休、復帰してからのことを考えることは避けては通れません。また、これからは介護についても考えていく必要があります。

育休から復職すると、子供の送り迎えなど、当然のことながら時間的な制約があり、そのことから仕事の内容が限定されることがあります。短時間勤務にせざるを得なくなり、結果、評価が下がったケースなどもあり、十分な対応ができているかどうは疑問が残るところでしょう。

また、現在日本では、男性社員の育休取得が可能ですが、厚労省「平成29年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は5.14%とかなり少ない状況です。女性が仕事をきちんとこなし、育児も全部担うとなると体力的にも精神的にも負担が大きくなるのは言うまでもありません。

しかし、人材不足のために、1人の欠員が大きく影響してくる企業もあり、男性社員が、産休・育休を気軽にとれる状況ではないことも課題として挙げられます。

女性が活躍できる仕事と職場

株式会社資生堂

資生堂は、社員の8割が女性であるため、さまざまな女性活躍支援制度に取り組んでいます。

https://www.shiseidogroup.jp/sustainability/diversebeauty/support/

また、事業所内保育サポートビジネスである「KODOMOLOGY」を2017年に設立しました。普通ならば、企業は産休や育休をメインとしますが、「KODOMOLOGY」は妊娠してから産休に入る時期にも焦点をあてサポートを行っています。

また、資生堂は1990年以降育児や介護に関する両立支援制度に取り組んでいます。

https://www.shiseidogroup.jp/sustainability/labor/working.html#fig_wo01

子どもが出来たら多くは両立が困難になり退職していましたが、社内改革が進み、育児をしながら仕事を継続できる環境が作られ、さらに男女とも子育てや介護をしながら、キャリアアップが出来る環境が作られました。それにより資生堂は、2016年度の「女性が活躍する会社BEST100」において、2014年度より3年連続で「総合ランキング1位」に選ばれ、部門賞として「ダイバーシティ浸透度1位」を受賞しています。

ダイバーシティ&インクルージョン

https://www.shiseidogroup.jp/sustainability/labor/diversity.html

東建コーポレーション株式会社

東建コーポレーションは、女性社員が活躍できるように、女性社員のキャリア形成、ワークライフバランス、意識改革を掲げており、東洋大学「女性活躍インデックス」法人ランキング2018において1位を獲得しました。

https://www.toyo.ac.jp/ja-JP/research/joseikatsuyaku/company-ranking/

女性管理職者のロールモデルづくりに取り組んでおり、新卒から上級管理者まで幅広くサポートを行っています。また、東建グループ社員向けに妊娠から育休、復職をする社員について会社全体で理解を深めるために「パパ・ママ サポートブック」という本を作成しました。

https://www.token.co.jp/corp/womens_participation/

東建コーポレーションは仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる企業に対し、「次世代育成支援対策推進法」に基づき、厚生労働大臣が実施している認定制度「くるみん」を取得しました。

株式会社ローソン

ローソンは、一定基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業に発行される認定マーク「えるぼし」を取得しました。2020年度には管理職における女性比率を30%にすることを目標とし、女性幹部育成研修の実施や育休中の社員向けに復職後のキャリア形成などの育休社員研修の実施することにより復職後の不安を払拭し活躍を推進しています。

また、育児と仕事の両立支援策として、育児時短制度や在宅勤務制度、ベビーシッター利用補助など様々な支援を行っています。男性の育休取得促進に力をいれており、2018年度には取得率が90%を突破しました。

http://www.lawson.co.jp/company/activity/stakeholder/employee/woman.html

女性が活躍できる職場環境の作り方

「女性が働きたいと思える環境」が一番重要です。

・出産・育児・介護をサポートする福利厚生の充実

制度の充実さより、何%・何人が各制度を取得してます。女性管理職は何人ですなどの実態が重要です。制度があっても誰も使っていなければ、意味がありません。

・企業風土の改革や男性社員の意識や価値観を変える

周囲の社員や管理職の理解が必要です。女性活躍の概要だけではなく、きちんと企業はどうすべきか、メリットなどをきちんと社内で理解することが大切です。また直属の上司は部下を会社の戦力として扱い、管理職へのキャリアアップの力となりましょう。

・ICTを活用する

現在の日本では働き方改革として会社ではなく、自宅やサテライトオフィスで仕事を行ったりするテレワークが推進されています。テレワークを導入することで育児をしながら、介護をしながらでもその人のライフスタイルにあった働き方が可能となりました。

まとめ

女性が活躍できる職場を現在よりもっと拡大するには、女性が働く上で抱える様々な課題の解決が必要です。それは女性が個人的に解決できるものではなく、企業と共に解決していかなければなりません。男性社員・女性社員ともに理解を深め、価値観の違いを改めていく必要があります。

社員が良い環境で働けるということは、生産性向上、そして企業の業績アップに結び付きます。また、働くことを希望しているけれど、育児や介護で働くことが出来ない人も、働くことが出来るかもしれません。大企業や中小企業問わず、女性が活躍できる職場作りの取り組みが進むことを願っています。