電子ごみとは?
電子ごみとは、廃棄される電子機器および電気製品のことです。
電子ごみの対象は主に、パソコン、コンピュータ、スマートフォン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ノートパソコン、タブレット、デジタルカメラ、エアコンなど様々な製品や電子部品が対象となります。
電子ごみが注目されている理由
電子ごみは私たちが日常生活で使用している電気製品の使用後のごみ問題として注目されています。
電子機器は一般的にテクノロジーの進化が早く、新製品が次から次に世の中に送り出されていますが、同時に古い製品のごみ問題が発生するともいえます。電子機器を長く使用したとしても、いつかは使用期限が切れて故障したりすると、買い換えが発生して壊れた製品は廃棄されます。
しかし、電子機器をそのまま廃棄すると環境問題を含む幾つかの問題が発生することから、SDGsをはじめとする持続可能な社会においては電子ごみを不適切に廃棄することは好ましくなく、将来私たちが地球で生きていくための重要な課題となっています。
電子ごみは貴重な資源
電子ごみは全てが不要なものではなく、電子ごみの中にレアメタルと呼ばれる貴重な資源が使用されていることも多くあります。レアメタルは地球に存在する希少金属であり、電気伝導性や耐食性に優れたり、最新の技術や産業において重要な役割を果たすことがあります。
レアアース、リチウム、チタン、コバルト、ゴールド、シルバー、銅など電子機器には利用されていることがあり、そのまま廃棄することはレアメタルをそのまま廃棄することになるため、リサイクルをはじめとした再利用活動が重要とされています。
電子ごみが適正に廃棄されないとどうなるのか?
電子ごみが適切に処理されない場合、環境や人間の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。電子機器には有害な物質が含まれている可能性があり、環境に漏れ出すことがあるためです。
電子ごみが健康に与える悪影響についていくつかの例が考えられます。
有害物質
鉛、水銀、カドミウム、ベリリウムなどの有害な重金属が含まれていることがあります。電子ごみとして適切に処理されないと、土壌や地下水に浸透して環境汚染につながることがあるため、これらの汚染された地域に暮らすことで健康被害が生じる可能性があります。
空気汚染
電子機器の廃棄時の焼却や解体作業でも、有害物質が大気中に放出されることがあります。空気中に放出された有害物質が人間の体内に吸入され、呼吸器系の問題や健康被害が引き起こる可能性があります。
食品への影響
有害物質が土壌や水中で魚などに取り込まれ、食物連鎖を通じて人間に影響を及ぼすことがあります。
汚染された水や食物を摂取する結果、有害物質が人間の体内に蓄積され、健康に影響を及ぼす可能性があります。
電子ごみと情報漏洩の危険性
電子ごみをそのまま廃棄した場合には、機密データなどの情報漏洩の危険性があります。
電子ごみにはパソコンやサーバーなどで電子データを保管するための、HDD(ハードディスク)やSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)などが含まれており、個人情報や機密情報を含む重要なデータが保存されている可能性があります。HDDやSSDなどのディスクをそのまま廃棄すると、電子ごみの環境問題と共に情報漏洩の危険性があるのです。
パソコンなどの廃棄やリース返却において、多くのメーカーやリース業者は古いパソコンを回収し、適正な廃棄やリサイクルや再利用を行っています。
しかし、近年でもパソコンやサーバーなどのHDDやSSDを適正に処理しなかったため、情報漏洩が発生した事件や事故がたびたび起こっています。
現代では、HDDやSSDなどに含まれる機密性の高いデータについては、適正なデータ消去を実施してから電子ごみとして処理する必要性が、情報漏洩対策の観点から求められています。
電子ごみのデータ消去と情報漏洩対策
HDDおよびSSDなどのディスクストレージを対象として、電子ごみの適切な廃棄方法と情報漏洩のリスク低減策をいくつかご紹介します。電子ごみのデータの消去で重要なことは、重要なデータが保存されているディスク内のデータを復元困難な状態までデータ消去することです。
データを消去する方法として幾つかの方法があります。
データ消去ソフトウェア
専用のデータ消去ソフトウェアを使用して、ディスク上のデータを消去することができます。
一般的には上書き消去と呼ばれる消去方式を採用しているソフトウェアを使用することで、ディスクに保存されたデータを適正に消去して復元を困難にします。専門業者に依頼することも可能ですが、ソフトウェアのためユーザー自身で購入してデータ消去を行うことも可能です。
ソフトウェア消去は再利用可能な形であり、電子ごみの問題についても有効なひとつの手段です。
無料のソフトウェアも幾つか存在しますが、マルウェアなどの危険性も考えられるため、信頼できるソフトウェアを選択することが情報漏洩の観点で重要です。
磁気消去
強力な磁力を用いてディスクのデータを消磁することが可能です。
ハードディスクやLTOなど磁性を持つ物体やメディアから磁気情報を消去して復元を困難にします。
一般的に、磁気消去は専用の機器が必要となり、ユーザー自身で実施することは難しいため、専門業者等に依頼することが殆どです。近年普及しているSSDは磁気ディスクではないため、磁気消去ではデータ消去できないことに注意する必要があります。
物理破壊
ディスクを物理的に破壊する方法です。
物理的にHDDやSSDを破壊してしまえば、データの復元は不可能となってしまうからです。データが記録された領域を破壊できないと、データの復元の可能性が残りますので、破壊方法に注意が必要です。
また、物理破壊は、データが復元不可能となっても、電子ごみの問題が残されることは覚えておきましょう。
リサイクル施設
ディスクを信頼できる廃棄施設に依頼することで、データの情報漏洩の危険性を最小限にしつつ、環境への影響を最小限に抑えることができます。公認の廃棄物処理業者やリサイクルセンターに相談して適切な処理を委託することもひとつの手段です。
メーカーの回収
一部のパソコンメーカー等は、過去に販売していたパソコンを回収しリサイクルするサービスを提供しています。メーカーが指定した方法でパソコンを廃棄できます。
以上から、電子ごみなどパソコンの廃棄はセキュリティと環境保護の両方を考えるべき重要な課題です。個人だけでなく企業も含めて、電子ごみの適切なデータ消去と廃棄やリサイクルなどが必要であり対策する必要性が現代では求められています。
まとめ
テクノロジーの進化で私たちの生活はデジタル化された結果、以前と比較して利便性が非常に向上しています。
その一方で電子ごみの問題が顕在化しており、環境問題や健康問題に発展することから電子ごみは適切な廃棄が必要とされています。加えて、情報漏洩のリスクが存在することから、機密性のあるデータのデータ消去など情報漏洩対策も求められています。
個人だけでなく企業も、電子ごみについて真剣に考えて取り組み、適切な廃棄方法を選択し情報漏洩対策を徹底することで、環境への配慮とデータセキュリティを両立させることができます。
この記事を書いた人
ワンビ株式会社
セキュリティエバンジェリスト 井口 俊介
高等専門学校卒業。大手企業のミッションクリティカルシステムのアカウントサポートを担当。
その後プロジェクトマネージャーにてITインフラの導入に携わる。
2020年からワンビ株式会社でエンドポイントセキュリティのプリセールスとして従事。営業技術支援、セミナー講演、コラムの執筆など幅広くセキュリティ業務に携わる。