中小企業がIT投資を行わない理由の第1位は「ITを導入できる人材がいない(43.3%)」、2位は「導入効果がわからない、評価できない(39.8%)」でした。
(参考:中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について 平成29年3月 中小企業庁)
中小企業のように従業員数を十分に確保できない場合、専任のIT担当がいないため総務部門が情報システム部門を兼任したりするケースも少なくありません。その反面、IT導入によってペーパーレス化やテレワーク環境を整備し、労働生産性をあげている企業が増えてきているのも事実です。
中小企業はクラウドサービスのITツールを利用すべき
中小企業でIT導入するにあたって「クラウドサービス」を利用する企業は年々増加傾向にあります。クラウドのERPやEDI、クラウドの給与・会計ソフト、クラウドのグループウェアなど様々なクラウドツールがあります。
総務省の「情報通信白書|クラウドサービスの利用動向のデータによると、クラウドサービスを「全社的に利用している」または「一部の事業所または部門で利用している」と回答した企業は、2014年末が38.7%、2015年末が44.6%、2016年末が46.9%でした。
(参考:総務省 情報通信白書 クラウドサービスの利用動向)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc252130.html
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc262140.html
「クラウド」は「オンプレミス」と比較すると、サーバー購入などの初期費用や、日々の保守運用管理やバージョンアップ作業が不要で、月々のサービス利用料にサポート料金が含まれています。人手不足の課題を抱える中小企業にとって、導入コストや、運用コストを抑えることができるのは、大きなメリットの1つだといえます。また、ネットワークさえ繋がれば、時間や場所を気にすることなく、いつでも・どこでも働く環境を用意できるメリットもあります。もしもの災害でオフィスに出社できないときのBCP対策や、テレワーク環境の整備にもクラウドITツールは活躍します。
IT導入の効果はグループウェアがもっとも高い
中小企業において、IT導入による効果が分からなかったり、評価できなかったりすることで、IT投資になかなか踏み切れない企業は少なくありません。
しかし、公益財団法人 全国中小企業取引振興協会の「規模別・業種別の中小企業の経営課題に関する調査」のデータよると、IT化した中小企業は、ITツールの利用によって生産性が向上し、利益伸長率が高まることが分かっています。中でも、従業員同士のスケジュールや業務の情報共有、コミュニケーションを目的とした“グループウェア”のようなITツールを十分に活用していると答えた企業の3年間の利益身長割合は、39.3%とERPやEDIなど他のITツールと比較してもっとも高い結果となっています。
(参考:規模別・業種別の中小企業の経営課題に関する調査(要旨) )
ITを活用して、労働生産性向上を高めたい場合、まずはグループウェアを導入すべきだと言えるでしょう。グループウェアがあれば、スケジュール共有や日々のコミュニケーションだけでなく、文書管理、稟議の申請、社内メールなどあらゆる業務をIT化できます。
時間や場所を気にせず仕事ができるようになるので、テレワーク環境の整備も可能になります。働き方改革で労働時間削減に取り組む会社や、子育てや介護などによって働く場所や時間に制約ができてしまった人材を確保しておきたい会社にとってテレワーク環境の整備は欠かせません。
人手不足に悩む経営者だけでなく、従業員もより自由な働き方を選択できるようになるため、経営者と従業員の双方にメリットがあるといえそうです。
2017年末、経済産業省は中小企業・小規模事業者13万社のITツール導入に500億円の予算を計上することを発表しています。IT投資コストに助成金を活用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
IT化に不可欠な情報漏えい・セキュリティのリスク対策
どんなツールであっても、IT化をすすめるにあたって「情報漏えい・セキュリティのリスク」の課題はつきものです。日本ネットワークセキュリティ協会の調査によると、2016年における個人情報の漏えい原因の14.5%は「不正アクセス」、そして18.3%は「紛失・置忘れ・盗難」という結果がでています。
(参考:2016年 情報セキュリティインシデントに関する調査報告書~個人情報漏えい編~)
不正アクセスや、デバイスの紛失・盗難などによって、重要な情報が流出してしまうと、会社全体の信頼を落としてしまいます。
特に、IT導入でテレワーク環境の整備する場合、リモートワークで様々なデバイスを持ち出すことが前提になります。社外に会社の情報を持ち出すことで高まる情報漏えいのリスクは、遠隔データ削除や、リモートロック機能のついたセキュリティ製品の導入により情報漏えいを未然に防ぐことが可能です。
こうしたセキュリティ対策は今後必要不可欠となるでしょう。