「Society 5.0(ソサエティ5.0)」とは内閣府が提唱するテクノロジーを活用した社会の仕組みを構築することです。
「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の現実を目指すには、人材育成が何よりも重要であり、教育の必要性が求められています。
そこで今回は、「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の定義や実現される具体例について解説します。
Society 5.0(ソサエティ5.0)とは
まずは「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の定義を見ていきましょう。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを活用し、経済発展と社会的課題の解決を両立させた新たな社会を指すことです。
▼人間中心の社会(Society)
- 狩猟社会(Society 1.0)
- 農耕社会(Society 2.0)
- 工業社会(Society 3.0)
- 情報社会(Society 4.0)
- Society 5.0(ソサエティ5.0)
2016年1月、日本政府は「第5期科学技術基本計画」において、「日本が目指すべき未来社会の姿」を発表しました。
従来の情報社会(Society 4.0)では、様々な制約により少子高齢化や地方の過疎化などの課題解決が困難でしたが、「Society 5.0(ソサエティ5.0)」では、人工知能(AI)の登場やロボット、自動走行車などの技術により、貧富の格差などの様々な課題を解決します。
わかりやすく言うと、最新テクノロジーを活用した便利な社会といったところでしょうか。
フィジカル空間のセンサーからの膨大な膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析を行い、フィジカル空間の人間にフィードバックされ、新たな価値が産業や生まれることになるのです。
経済発展と社会的課題の解決に向けて、世界に先駆けて先端技術を社会生活に取り入れ、未来社会を目指します。
Society 4.0(ソサエティ4.0)で見えてきたこと
現在の(Society 4.0)では、インターネットの普及により社会に大きな変化をもたらしました。しかし、情報氾濫により、個人が本当に必要な情報を見つけて分析・共有することは困難な状況にあることも事実です。また、少子高齢化や地方の過疎化が深刻化し、人材不足は慢性化していることも大きな課題となっています。
Society 5.0(ソサエティ5.0)で実現するもの
内閣府は、IoTやAI、クラウド、ドローン、自動走行車・無人ロボットなどの活用を推進しています。最新テクノロジーを取り入れて、少子高齢化・地域格差・貧富の差などの課題を解決する方針です。
ここからは、「Society 5.0(ソサエティ5.0)」実現でき得るものを具体的に見ていきましょう。
遠隔医療
日本は5人に1人が65歳以上を占め、「超高齢社会」の真っ只中にあります。
2012年は40兆円だった国民医療費は年々増大し、2030年には60兆円以上になると見込まれています。高齢者が増え続ける中、逆に、医療従事者が減っているため解決策が求められています。
しかし、解決策のひとつでもある高額医療機器導入では、コスト面での負担が大きくなるという新たな課題もあり、医療・介護は課題が山積みです。
そうしたなかで、IoT・AI技術を活用した「遠隔診療」は、最適な医療・介護を提供するきっかけになると期待されています。専門端末によって診療を受けられるため、通院回数が減り、医師同士で電子カルテの情報共有もスムーズになるのです。
スマート農業
農家の高齢化、新規就農者の不足により、農業従事者は年々減少しています。
農林水産省では、ICTやロボット技術を活用した超省力・高品質生産型の「スマート農業」を推進しています。
ドローンやスマートフォンで農作物の画像を取り込みAIで分析し、病害虫の検知や発生予測を行うことができるようになります。また、最近話題となっている食料の増産・ロスに関しても削減することができるようになります。
人手不足解消
すでに大手スーパーなどの店舗では、ロボット、AI、セルフ決済レジなどを活用した無人店舗が始まっています。
また、防犯カメラが撮影した画像をAIが分析し、マーケティング戦略や最適な在庫予測などの取り組みが実現しています。
今後、さらにIoTやAIが導入されると、人間の単純作業や重労働の負担が減り、人手不足が解消されることも期待されています。
Society 5.0(ソサエティ5.0)での教育の課題
サイバー空間とフィジカル空間を最新のテクノロジーで融合させるためには、それを実現するための人材育成が非常に重要になってきます。
文科省が目指す「Society5.0」に向けた人材育成「社会が変わる、学びが変わる」によれば、以下の点を指摘しています。
▽ここがポイント
- AI と基礎となる数学・情報科学等に関する研究開発と教育が米国・中国等よりも遅れている。
- 米国では情報科学を学ぶ学生が増えているが、日本では情報科学や AI に関する知識・技術を持つ人材が極めて少ない。
- Google、Amazon、Facebook等と我が国のトップ企業を比較してもデータ、技術、人材に大きな差がある。
Society5.0を実現するための学校教育
新しい社会としてのSociety5.0では、従来の情報中心の社会で実施してきた教育とは違った観点での教育が必要になってきます。次の世代の人たちが最新テクノロジーを活用して、よりより社会にしていくためには、学校教育から見直していく必要があります。
従来の授業スタイルではなく、読解力の基盤的学力を確実に習得しながら、最新テクノロジーとの共存を目指すことが重要で、それには、科学的に思考・吟味し活用する力や価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力が重要視されています。
AI(人工知能)、IoT、ロボットなど、ICTを活用した環境を整えることは、新学習指導要領の理念にもなっています。
▼取り組むべき政策の方向性
- 公正に個別最適化された学びの実現
- 基盤的な学力や情報活用能力の習得
- 大学等における文理分断からの脱却
今後は、学校の教員だけでなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、部活動指導員等の専門スタッフとの連携も欠かすことができません。「社会に開かれた教育課程」による教育を進め、社会全体で義務教育を支えていかなければなりません。
Society5.0では、学校教育において、生徒一人一人の興味や関心を引き出すために、多様な学びの場を提供して教育の質を向上させることが求められます。
===急速に進化している生成AIに対する新しい教育の必要性===
生成AIとは、人間が作成したテキストや画像などのデータをもとに、新たなデータを自動的に生成するAIのことです。近年、生成AIの技術は急速に進化しており、様々な分野で活用されています。
例えば、プログラム開発では、生成AIがコードを自動的に書いたり、デバッグしたりすることで、開発者の負担を軽減することができます。データ分析では、生成AIが膨大なデータから有用な情報を抽出したり、視覚的に表現したりすることで、分析者の効率を向上させることができます。グラフィックでは、生成AIが人間の顔や風景などをリアルに再現したり、オリジナルの作品を創造したりすることで、クリエイターの創作の幅を広げることができます。
これらの例からわかるように、生成AIは人間の知識や能力を補完したり、超えたりすることができる強力なツールです。
しかし、その一方で、生成AIの使い方や倫理についても考える必要があります。生成AIが作ったデータは、本物と区別がつかない場合もあります。そのため、生成AIが悪用されたり、誤解されたりする可能性もあります。
そこで、Society5.0では、生成AIの活用による新しい教育の見直しも必要になってくるでしょう。
生成AIの仕組みや特徴を理解し、正しく使えるようにする教育が必要です。生成AIは、学校教育において、生徒一人一人の学びを豊かにすることができますが、同時に、生徒一人一人の判断力や責任感を育てることが重要です。
生成AIの活用による新しい教育の見直しは、Society5.0を実現するために必要な“教育”のひとつです。生成AIは、私たちの生活や社会を大きく変えることは間違いないため、その変化に対応できるように、私たちは生成AIについて学び続ける必要があります。
まとめ
「Society 5.0(ソサエティ5.0)」はIoTやAIの導入により、医療・介護・農業・環境・エネルギーといった様々な分野で、社会的課題が解決されます。
しかし、内閣府が目指す「学びの在り方の変革」では、従来の学びのシステムは変えなければならないのです。学校の教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、部活動指導員等の様々な教育に携わる方々の連携だけではなく、教育スタイルそのものの変革も必要になってくるのではないでしょうか。
Society5.0(ソサイエティ5.0)で留意すべき点
Society5.0では、教育が重要な課題となるのは前述のとおりですが、その教育の中で忘れてはいけないのが「情報セキュリティ」です。テクノロジーの進化に伴い様々なセキュリティの課題もきちんと把握しておくことが重要です。