はじめに
先日、弊社のサービス提供パートナーであるAPRESIA Systems株式会社様(以下、APRESIA Systems)の技術センタを訪問する機会をいただきました。
普段は立ち入ることが難しい施設ですが、今回ご招待いただきましたので、訪問の様子をまとめてご紹介いたします。
APRESIA Systemsについて
資料:APRESIA Systems の沿革
APRESIA Systems株式会社は、1990年に国産初の管理機能付きイーサネットハブを開発・販売し、2003年より「APRESIA」ブランドとしてネットワークスイッチを提供している老舗のネットワークメーカーです。2016年には日立金属株式会社から独立し、APRESIA Systems株式会社として新たにスタート、その後オリックスグループの一員となりました。
現在、同社は従業員330名以上(関連会社であるエイチ・シーネットワークス株式会社を含めると600名以上)の体制を有しており、24時間365日対応可能なコールセンタや技術窓口を設置するなど、ミッションクリティカルシステムにも対応できる安心で強固なサポート体制を構築しています。また、ネットワークスイッチのハードウェアからソフトウェアまで、長年培った高度な技術力とトータルサポート体制により、顧客の多様なニーズに応えるサービスを提供しています。
APRESIA Systemsの製品ラインナップ
資料:APRESIA Systems の製品ラインナップ
つくばネットワーク技術センタ
APRESIA Systemsのつくばネットワーク技術センタは、茨城県土浦市に拠点を構えています。
「つくば」といえば、多くの方が思い浮かべるように、この地域には数多くの研究施設が集まっています。
その背景には、科学技術の発展を目的として1960年代から国家プロジェクトとして計画・整備された「筑波研究学園都市」の存在があります。 この都市は、広大な土地と優れた交通アクセスを活かし、多くの大学や研究機関が集結しており、日本を代表する有名な研究機関が点在しています。
///つくば周辺に存在する研究機関の一例///
文教系:国立公文書館つくば分館、国際協力機構筑波国際センタ、筑波大学、筑波技術大学など
建築系:NTTアクセスサービスシステム研究所、防災科学技術研究所、国土地理院、国土技術政策総合研究所など
理工系:宙航空研究開発機構(筑波宇宙センタ)、産業技術総合研究所、気象研究所、国立環境研究所など
生物系機関:医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センタ・薬用植物資源研究センタ、農業・食品産業技術総合研究機構など
製薬系:アステラス製薬株式会社 つくば研究センタ、大鵬薬品工業株式会社 研究本部、共立製薬株式会社 先端技術開発センタなど
つくばネットワーク技術センタも、このような多くの研究機関が集まるエリアに位置しています。同センタは、もともと旧日立電線株式会社の半導体工場の敷地や施設を活用しているため、広大な敷地の一角に設置されています。ここでは、サービスプロバイダー向けスイッチ、企業やデータセンタ向けのL2/L3スイッチ、小規模ビジネス向けスイッチ、光伝送装置など、APRESIA Systemsの主力製品の研究、開発、設計、品質管理、実験評価が一貫して行われています。
季節的に紅葉が綺麗な時期ということもあり、良い季節に訪れることができました。
写真:APRESIA Systems つくばネットワーク技術センタの外観
つくばネットワーク技術センタは技術的な拠点であり、本社のある築地には営業、マーケティング、システムエンジニア(SE)が配置されているとのことです。
資料:つくばネットワーク技術センタの役割
また、研究所の近隣にはネットワーク機器などの在庫・物流・保管や試験を行うRMA拠点があります。
RMA拠点から全国各地の拠点へ機器が輸送される仕組みが整備されています。
これにより、お客様やパートナーからの「すぐにネットワーク機器を購入したい」「検証を行いたい」といったご要望にも迅速に対応できる体制が構築されているとのことです。
資料:在庫を管理する物流倉庫・試験場
企業の研究所の存在意義
つくばをはじめとする日本の科学技術拠点は、専門分野ごとの高度な研究環境が整備され、まさに「日本版シリコンバレー」とも呼べるエリアです。
多くの企業や研究機関が集積し、互いに刺激を与えながら技術革新を推進しているため、企業にとって「研究所」を持つことの意義は非常に大きいと言えます。
単に開発費を投じるだけではなく、自社製品やサービスに直結する基礎研究から応用研究までを内製化することで、新しい技術や製品の開発を加速できるからです。
さらに、独自技術やノウハウを蓄積することで、競合他社との差別化を図ることが可能になります。
また、研究所は企業の中長期的な成長を支える基盤でもあります。
短期的な利益追求だけではなく、未来を見据えた事業戦略の柱として、研究開発に注力する企業姿勢を示せることができ、この姿勢が企業価値の向上にも直結するのです。
近年では人材不足の課題においても、研究所の存在は重要な役割を果たしており、研究所を保有することで「研究開発型企業」というブランドイメージをアピールでき、優秀な研究者や技術者を惹きつけることができるのです。
ワンビではこのような研究所施設は保有していませんので、ある意味羨ましくもあり見学させて頂きました。
施設の目の前には広いお庭も存在しており紅葉の季節がベストシーズンかも知れません。
写真:施設の目の前には広いお庭も存在
LABルーム見学
続いては楽しみにしていたLABルームの見学です。
私自身はデータセンタのサーバールームなどは何度も入室したことあるので、大体のイメージはついていましたが、顔認証システムで認証を行い入室すると、普通のマシンルームとは異なる風景でした。
恐らく9割以上はネットワークスイッチなどの関連機器が並んでおり、これだけ多くのネットワーク機器が並んでいるのは初めて拝見しました。
ラック数だけでもおそらく80ラック前後あり、ほぼすべてネットワーク機器です。
これだけ多くの機器が揃えられるのも、メーカーだからこそできることですし、多くの機器があれば、開発・検証・テスト・トラブル対応なども迅速にパートナー・代理店・お客様などに対応できると考えられます。
ここからは、私が気になった機器TOP3をご紹介します。
気になった機器 第3位「サービスプロバイダ向けスイッチ」
データセンタやインターネットサービスプロバイダー(ISP)の基盤となる「サービスプロバイダ向けスイッチ」です。
日常的にはあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、インターネットが快適に利用できるのも、このサービスプロバイダ向けスイッチが高度に機能しているおかげです。
写真:サービスプロバイダ向けスイッチ
サービスプロバイダ向けスイッチ(別名:コアスイッチ)は、ネットワークの中心的な役割を果たすネットワーク機器で、大規模な通信を高速かつ安定して処理するために設計されています。
とくに企業ネットワークやデータセンタ、インターネットサービスプロバイダー(ISP)のインフラなど、広範囲のデータ通信を担う場面で使用されます。
コアスイッチの凄さは、膨大なデータ通信を処理する「性能」と「信頼性」にあります。
データセンタやISPでは、数千万、時にはそれ以上のデバイスが同時に通信を行います。この膨大なデータ量を捌くために、コアスイッチは膨大な通信データを処理することが可能です。
ケーブルも家庭では見られないような40Gb・100Gbといった非常に高速な通信がサポートできる機器やケーブルが取りそろっています。
データセンタが利用するようなコアスイッチは、コンピューターに関わっている方もあまり目にすることはないので興味深く拝見しました。
この他にも通常のネットワークスイッチ等が沢山ありました。
ケーブリングも色分けがしっかりされており、管理する側も見やすくなっています。
最近はUTPケーブルではなく、オプティカルケーブルも多く利用されているように見受けられました。 ちなみにAPRESIA Systemsのスイッチは青・水色などで塗装されているようです。
写真:Apresiaシリーズのネットワークスイッチ
気になった機器 第2位「環境試験器」
写真:環境試験器
この機械は「環境試験器」というもので、製品や部品が温度、湿度、振動などの異なる環境下でどのように性能を発揮するかを評価するために使用されます。
たとえば、ネットワークスイッチの仕様をWEBサイトなどで確認すると、「動作温度」や「動作周囲相対湿度」の項目がありますが、「環境試験器」による試験などが仕様確定にも直結していると考えられます。
一般的にサーバーやネットワーク機器が設置されるコンピューター向けのデータセンタでは、温度や湿度が一定に保たれ、機械にとっても優しい環境で動作できると思いますのであまり気にしないかと思います。
しかし、スモールオフィスや倉庫のような場所にネットワーク機器を配置すると、温度や湿度のコントロールは難しい環境も多いと考えられます。
このような場合に、製品仕様で動作する温度や湿度の範囲が大きいと、実際に使用するユーザーにとっても安心につながるのだと思います。ネットワーク機器は停止すると業務停止に直結する可能性があるためです。
専用の機器でこれらの試験を行うことで、信頼性が高く、耐環境性に優れたネットワーク機器の開発・製造が可能になります。
気になった機器 第1位「ネットワークパケット生成・試験装置(パケットジェネレーター)」
一番気になったのがこの白い装置。ぱっと見では私にはなんの装置か全くわかりません。
第一印象は何かカッコいい!という印象で非常に目立ちます。
話を伺ってみると、「ネットワークパケット生成・試験装置」とのことでした。
写真:ネットワークパケット生成・試験装置(パケットジェネレーター)
具体的には、ネットワークセキュリティテストやネットワークテストハードウェアなど、ネットワーク機器やアプリケーションの性能、機能、セキュリティ、適合性を大規模にテストするための装置だそうです。
WEBサイトなどで詳しく調べてみると、ネットワーク機器やアプリケーションが高負荷時にどの程度の性能を発揮するかを検証したり、脆弱性の有無や攻撃に対する耐性を評価できたりするとのこと。
また、業界標準や規格に準拠しているかを検証するなどの基礎テスト等にも利用されるようです。
ネットワーク機器は信頼性が一番大事だと思われますので、先ほどの環境試験機同様に、さまざまなパターンのパケットを生成したり、負荷を掛けたりすることで、品質を確認して向上させることが非常に大事だと思います。パートナーやユーザーにとっても、このような機器でしっかりと品質テストが行われた機械を生産しているということは、こちらもやはり非常に安心感に繋がると考えられます。
お値段は・・・家が購入できるほどのお値段のようです。
まとめと感想
今回は、APRESIA Systemsのつくばネットワーク技術センタを訪問し、その内容をご紹介させていただきました。これまで何度かサーバールームへ入る機会はあったものの、ラック数だけでもおそらく80ラック前後、そのラックほぼすべてにネットワーク機器が並んでいる光景は初めてで、圧巻の一言でした。これだけ多くの機器が揃えられるのも、メーカーだからこそですし、この施設があるからこそ、開発・検証・テスト・トラブル対応などを迅速にパートナー・代理店・お客様などへ提供できているのだろうと感じます。 近年では、5Gサービスの登場で情報システムの在り方も大きく変化しようとしていますが、APRESIA Systemsは、オープンネットワーキング技術の活用やパートナーとのエコシステム構築によりお客様にとっての“ちょうど良いシステム“を提供し、私たちの暮らしや、社会・企業活動に必要不可欠なインフラへ更なる付加価値をつけて発展を支えてくれることでしょう。
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