2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめ、日本でもDXの動きが見られました。DXとは一体何かについては、当コラムの『「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の課題~DXがもたらすビジネス変革の陰で機密情報や個人情報をどう守る?~』で詳しく紹介しています。
DXは今後のビジネスにおいて必要不可欠な存在ですが、コロナ禍により大きく変化しています。DXには一体どのような変化が起こっているのでしょうか。
当初の国内で推進されていたDX
当初、日本国内で推進されていたDXは、経済産業省が先導して企業に対してデジタルシフトを推進しているものでした。富士キメラ総研がまとめた「2018デジタルトランスフォーメーションの市場の将来展望」によると、DXに対する投資額が、年々投資額が増えていくと予想していました。
実際に2019年でDXの導入は大手企業を中心に増えはじめ、中堅企業でも2割程度はDXを積極的に導入していたという経緯がありました。
一方で、中小零細企業の多くは、DX導入にコストがかかることやITリテラシィを持った人材の不足などから、デジタルシフトに踏みきれない現状があり、大手企業と中小零細企業では、DX導入に大きな差が生まれていました。
コロナ禍でのDX需要の変化
前述のとおり、DX導入を進めるには、ある程度のコストが必要になるという課題がありました。また、企業をけん引する社長や幹部社員の中にはデジタルに関する知識が浅く、デジタル技術を取り入れることの優先度が低い企業が少なくないという問題点がありました。
しかし、コロナ禍のなかで社会全体が「人と会う」ことを避ける傾向が生まれ、「人と会う」ことで成り立っていた様々なビジネスが成立しなくなってしまいました。
人と会うことが出来なくなった結果、ビジネスの主戦場はオンラインへとシフトし、デジタル化なしでビジネスが成立していた中小零細企業もDXの導入が必要不可欠となったのです。一体どのように変化があったのか、具体例を紹介しましょう。
在宅ワークのためのオンライン環境の充実
オフィスに出社しなくてもできる作業は、在宅ワークにシフトしました。パソコンとインターネット環境が整っていれば、どこからでも業務を行うことが可能です。最近では、在宅ワークを支援するためのデスク、専用チェアなども充実し、どんどん在宅ワークがしやすい環境になってきています。
こうした状況でのDX導入は、ノートパソコンやタブレットの支給だけではありません。在宅ワークの環境が整い、在宅での作業が可能になっても、コミュニケーションするためのオンライン会議の環境整備が必要になります。
このように、在宅ワークを推進する必要があることからDX導入に踏み切ったという企業も多くあります。
デバイスの持ち運びのためのセキュリティ環境の充実
在宅ワークは自宅で仕事ができる一方で、問題点もあります。従来は社内でのみ使用していたパソコンやタブレットをを持ち運ぶ必要がでてきます。デバイスを外部に持ち運ぶことで、情報漏洩のリスクが高まり、企業は情報漏洩を防ぐための対策が必要になります。
その結果、外部からのアクセスを前提としたシステム構築やデータ流出を防止するためのセキュリティ環境の見直しが加速しています。
外出自粛による収入の減少でのオンラインビジネス転換
密を避けるために、人が集まる場所への外出をを控える風潮となっています。店舗を展開しているビジネスの売上の減少が続く中で、外食産業、スポーツジム、ヨガスタジオ、そして、それらの店舗と取引している卸売業界は深刻な状況となっています。
それらの業界では、少しでも収入を得るために、オンライン販売、オンライン教室など、来店しなくても売上を確保できるビジネス展開が生まれています。また、ナイトクラブやスナックでは、オンライン飲み会をファシリテートするビジネスなども誕生しています。
対面販売のオンライン化
対面販売を主流にしていたビジネスでは、ネット上で商談できる仕組みを構築しているケースも出てきました。
衣類、食品などの販売は、比較的オンライン展開がしやすい環境でしたが、物販業界だけでなく、不動産販売でもオンライン化が進んでいます。新築マンション、住宅の購入では、オンライン上で、VR映像で物件の詳細を提供する動きが見られます。
こうしたオンラインサービスを導入することで、コロナ禍が落ち着いた後も、遠隔にいるなどで足を運ぶことが困難な顧客にアプローチできるなど、様々なメリットが期待出来るでしょう。
医療・診療のオンライン化
感染拡大を防ぐため、医療機関でのオンライン化も進んでいます。オンラインで診察をして、薬を処方してもらい、かかりつけの薬局で薬を受け取る流れも進んでいます。
オンライン診療が一般的になれば、病院に通いたくても通うことができなかった人たちにも、新たな医療の流れが提供が期待出来るでしょう。
まとめ
コロナ禍で大手企業が積極的に取り組んでいたDXもあらゆるジャンルでDXが進んでいます。コロナ禍が収束した後には、産業全体で、オンラインと対人とを組み合わせた画期的なサービスが確立しているのではないでしょうか。
今後は、これまで日本企業で課題があった「DX」が、コロナ禍をきっかけに急速に進むのではないでしょうか。