数年前からIoT(Internet of Things)という言葉を聞くことが多くなりました。直訳すると「モノのインターネット」となりますが、様々なモノがインターネットに接続されて、相互に制御される仕組みのことです。
これまでインターネットの活用と言えば、検索エンジンでの情報収集、メールやメッセンジャーアプリでの情報伝達、SNS利用、スマホアプリの利用など、インターネット上の情報を直接的に見たり活用したりすることが一般的なイメージでしたが、これからはモニタから見る情報以外にもインターネットが活用されていく時代になっていきます。
ここで言うモノは“あらゆるモノ”のことで、Iotの具体的な例でいうと、「スマホで家のあらゆる家電製品を制御する」「スマホで家の窓やドアの施錠を確認する」「人の好みに合わせて部屋の温度を自動的に調節する」「今の駐車場の空き状況をアプリで確認できる」「どの駅のトイレが空いてるか確認できる」「自宅に居ながら医師の診療が受けられる遠隔診断」「車の自動無人運転での宅配」など、あらゆる分野での活用が期待されています。
と言っても、まだ実用化されて一般的になっているものはそれほど多くありませんので、今ひとつピンとこない人もいるかもしれません。
今日は、海の家で実現していたIoTの事例を紹介します。
海の家×テレワーク?
海の家と聞いて、ITやインターネットをイメージする人はあまりいないのではないでしょうか。
しかし、夏限定でIT企業が片瀬東浜海水浴場にある海の家「SkyDream Shonan Beach Lounge」をオープンしています。
今回、「SkyDream Shonan Beach Lounge 2018」の運営会社である株式会社セカンドファクトリーの菅様に取材をしてきました。
テレワークが出来る場所として思いつくところは、カフェなどのオープンスペース、コアーキングスペース、サテライトオフィスなどが挙げられますが、「SkyDream Shonan Beach Lounge」には、テレワークスペースがあり、電源やWi-Fiが完備されているので、海を見ながら仕事が可能なのです。Wi-FiはFree Wi-Fiの他に、テレワーク用のWi-Fiが用意されています。
海の家×IoT
さて、ここでは、利用時に渡されるバンドや各席にはQRコードが用意されています。
実は、ここから食事などのオーダーが可能となっていて、注文した料理が出来上がった際は、SMSでお知らせをしてくれます。お客さんは、出来た料理を取りに来るだけでいいので、行列に並ぶ必要はありません。
また、クレジットカード決済が可能であるキャッシュレス決済に対応しています。
もちろん直接の注文も可能です。レジもタブレット端末で行っていて、注文が来た際は、フード・ドリンク、レジに置いてあるタブレットに反映されます。
注文を受けた料理はもちろんのこと、会計数、客数、蓄積数、売上ランキングがクラウドで管理されています。これらは、株式会社セカンドファクトリーが自社開発したソフト「QOOpa」を利用しています。
タブレットは機動性がある反面、盗難や紛失の危険性が高いため、ワンビ株式会社の「TRUST DELETE Biz パナソニック版」を導入して、不正な持ち出し監視や遠隔から操作不能にしたりデータを消去したりできるようにセキュリティ面にも配慮しています。
(TRUST DELETE Bizの詳細はこちら:パナソニックサイト、ワンビサイト)
クラウドで管理された来客数や人気ランキングは、「MotionBoard」で【見える化】して、リアルタイムに反映されていました。
さらに、データをクラウドで管理することで、海の家にいなくても売上を把握することが可能となっています。
今まではレジ閉めを行い、売り上げをメールまたは電話で経営側に共有するしかなかったものが、いつでもどこでも確認することが出来るので業務効率化が向上します。
また、その日までの売上もデータ化しているので、「天気予報」×「過去の売上」をすることで、仕込みを予測、シフト調整が可能になったとのことです。「データがあってこそ出来ることであり、勘では確実ではない。」と菅様は言っています。
店内には、ロッカー・トイレ・シャワー室・キッチン内にセンサーが設置されています。
ロッカーにあるのは、忘れ物センサーで、このセンサーを設置したことにより忘れ物が少なくなったそうです。また、トイレ・シャワー室は、空き状況のチェックのために、キッチン内は、温度・湿度管理のためにセンサーが設置されています。
モニタリングすることで従業員がどのような働き方をしているか、どういうコンディションで働いているのかを経営側が把握可能で、センサー設置により、お客様も従業員も、海の家をより快適に過ごせるようになりました。
海の家×厳選食材
「SkyDream Shonan Beach Lounge」では、焼きそば、唐揚げ、カレー、ラーメン、どんぶりものなど、海の家の定番と言える商品を提供していますが、厳選した食材を使用しているため、海の家とは思えない程のレベルの高さです。セカンドファクトリーさんが運営している「極鶏.Bar」の唐揚げ、金時豚を使用した料理はとても美味しいと評判です。
また料理に使われている食材などは、セカンドファクトリーさんが運営している徳島県鳴門市にある加工場「THE NARUTO BASE(ナルトベース)」で産地の食材を加工し、提供しています。「THE NARUTO BASE」は6次産業化を推進する複合型6次化共創施設であり、加工場とレストラン、直売所が併設しています。
色や形、大きさが規格外というだけで処分してしまう食材を仕入れて、「THE NARUTO BASE」でおいしい料理を作りレストランで提供しています。また加工をしたものをすぐに海の家や「極鶏.Bar」で提供しています。
実際に飲食店や徳島県の農家をまわって苦労などを実際に目にして、ITをどんどんいれていかなければならないと感じたそうです。飲食に関する現場とITの現場を知っているからこそ、この様な取り組みが可能になったと言えます。農家の悩み、飲食店の悩みを、ITを活用して解決しています。
菅様は、海の家がオープンしている夏の間、「THE NARUTO BASE」がまだ出来ていなかったとき、近くにマンションを借りて、2~3時間の仕込みを行い、朝から海に運んでいました。
その結果、睡眠時間があまりとることが出来なかったそうです。しかし、「THE NARUTO BASE」が出来てからは、即加工された料理が冷凍で送られてくるため、調理は湯煎で温める作業に変わり、体力的にもとても楽になったということです。
海の家や「THE NARUTO BASE」、「極鶏.Bar」など、IT以外の運営を行っているセカンドファクトリーさんですが、「何でもやってみよう」「自分たちでやってみよう」という会社で、実際にシステムを飲食店で使ってみたらわかるかもしれないと思い、海の家をオープンしました。
実際に運営をしてみると、たくさんの課題を発見し、自分たちで使いにくい部分を見つけ、システムのアップデートを行うという作業を行ってきました。入社後は、運営している飲食店で、使用しているシステムを実際に体験し現場を知ることから始めるそうです。
「SkyDream Shonan Beach Lounge 2019」にむけて
「SkyDream Shonan Beach Lounge 2019」にむけて、来年に向けての改善する点をお伺いしたところ、運営面においては、
- 不特定多数の方が出入りしているので、ITシステムへのセキュリティ面も強化が必要
- センサー・ロッカーの管理は単独で行っている為、まとめてデータ化出来るようにしたい。
- 外国人観光客が多く見られるため、英語表記のメニューが必要。
- レジでのクレジットカード決済 など
料理面に関しては、かき氷などの他に写真映えするような料理が必要とのこと。
「もっと進化をしないといけない、昔ながらの方法では海水浴がすたれてしまう」と菅様は話しています。
「SkyDream Shonan Beach Lounge2018」は、ITの海の家+「THE NARUTO BASE」という、最高な組み合わせで「IT×厳選食材×快適空間」が実現しました。
今までITとは関わりがなかった場所が、ITによってさらに良い場所に進化することが出来るということを、今回お話を伺って実感しました。
菅様、お忙しい中お話をしていただきまして、誠にありがとうございました。
2019年は、是非皆さまも『SkyDream Shonan Beach Lounge』で海と美味しい料理を満喫してはいかがでしょうか。
おまけ
ワンビは、「SkyDream Shonan Beach Lounge2018」に行き「手ぶらでBBQ」をしてきました。
本当に海の家でしょうか!と思うほど、新鮮な野菜とお肉でした。とても美味しく頂きました。唐揚げは特に絶品です。BBQ前は、テレワークも行いました。
ワンビカラーのかき氷『OneBeach』です。2018年の夏の終わりにとても楽しく過ごすことが出来ました。