IT分野で考えられるSDGsの取り組み

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SDGsは環境問題などと関連付けて語られることが多いため、IT関連の人々にとっては、どこか他人事のように感じられるかもしれません。しかし、SDGsは地球人類全員に掲げられた目標であり、IT分野にもSDGsを達成するために行うべき取り組みが存在します。本記事では、そんなIT分野に求められるSDGsの取り組みについて紹介します。

 

IT分野で取り組めるSDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年に国連サミットで採択された国際的な開発目標です。

その目標は全部で17に分かれており、「1. 貧困をなくそう」「14. 海の豊かさを守ろう」などといった差別撤廃・環境保全に関するものが多いため、IT分野には関係が薄いものと思われる人もいるかもしれません。しかし、「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」など、ITでの実現が期待されている目標も存在します。そこで、IT関連で考えられるSDGsの取り組み例について、代表的なものを5つピックアップしました。それぞれ具体的に確認していきましょう。

 

IT分野で考えられるSDGs①:スマートビルディング

スマートビルディングとは、建物管理を最新のIoT技術を用いて行うビル管理システムのことです。

ビルの照明や空調の設定は部屋ごとに使用状況が異なるため、手動管理ではどうしても無駄が生じてしまいます。しかし、スマートビルディングを導入することで、それらの設定をシステムで一元的・自動的に管理することが可能となります。その結果、照明や空調の維持に必要な電気などのエネルギーコストだけでなく、管理者を常駐させるための人的コストの削減にも繋がります。

また、スマートビルディングにはこれ以外にも、オフィス内の従業員の勤務状況管理や、防犯カメラなどの各機器連動によるセキュリティ向上といったメリットが挙げられます。

 

IT分野で考えられるSDGs②:基幹システムの導入、一元化(ERP)

基幹システムとは、企業の在庫管理から財務まで、企業経営のうえで必要不可欠な業務を担うコンピューター管理システムのことです。

基幹システムを導入することで、企業は売上・在庫・債務状況などのデータをコンピューター上で管理することができます。それにより、従来であれば人の手で行っていた数値入力などの作業も大幅に削減でき、業務の効率化に繋がります。また、複数の基幹システムを一元化したERP(Enterprise Resources Planning)を導入すれば、それぞれの業務を一連の流れとして管理することが可能となり、より効率的な業務遂行が可能となります。

基幹システムの導入、ERPによる一元化により、作業や管理のために必要だった人件費を削減できるだけでなく、ペーパーレスによる資源削減、CO2排出量の削減も期待できます。

 

IT分野で考えられるSDGs③:情報セキュリティ人材の育成

IoT導入が進むなか、サイバー攻撃や不正アクセス、コンピューターウイルスによる情報漏洩などの可能性が高まり、深刻な社会問題となっています。そのようなセキュリティ犯罪や事故を防ぐためには、高度な情報セキュリティ対策が求められます。

情報セキュリティを高めるためには、対策用システムの構築が欠かせないのはもちろんですが、そのようなシステム構築に完成はなく、繰り返しのアップデートが必要です。そのため、日々移り変わる脅威に対応し、十分な情報セキュリティ対策を実現するため、柔軟かつ的確に対処できる人材を育成していかなければなりません。

情報セキュリティにおける人材不足は、IT業界に限らず社会全体に及びます。たとえば、2018年の総務省の調査では、中小企業の過半数で情報セキュリティ担当者がいない、いる場合でも4割が他の業務と兼任していると報告されています。

 

IT分野で考えられるSDGs④:テレワーク(在宅勤務)の推進

コロナ禍の影響から、多くの企業でテレワーク(在宅勤務)の推進が求められるようになり、その普及率は日々高まっているように見受けられます。しかし、総務省のまとめたデータによれば、テレワーク導入企業は2020年3月時点で17.6%、1年後の2021年3月時点で38.4%とあり、依然過半数以下にとどまっています。また、緊急事態宣言の前後で20%前後の変動が出ていることから、新型コロナウイルス終息後もテレワークが定着するかどうか疑問視する声が多いのも実情です。

テレワーク普及率を高めるためには、IT技術の活用が必要不可欠です。先述の基幹システムの導入・一元化や、情報セキュリティ対策(人材育成)などを徹底してテレワークを推進することで、不必要な人流が減少でき、通勤によって排出されるCO2削減や省エネルギーにも繋がります。

 

IT分野で考えられるSDGs⑤:移動・輸送の省エネルギー化

人の移動や物の輸送において、乗り物や輸送機の利用は避けられません。その中でも、コロナ禍以降に急拡大したEC需要の影響から、物流輸送におけるCO2排出量の増加が問題となっています。また、それに加えて物流業務における慢性的な人手不足も大きな課題です。

これらに対応するため、配車アプリやカーシェアリングに代表されるMaaS(Mobility as a Service)や、ピッキングなどの倉庫内業務を自動化するWMS(Warehouse Management System)などの実用化が進んでいます。移動・輸送における省エネルギー化は今後も大きな課題として残り続けることが予想されるので、更なる技術革新が必要となるでしょう。

 

まとめ

SDGsは世界全体で取り組むべき課題です。その中でIT分野が果たすことのできる役割は決して少なくありません。スマートビルディングや基幹システムの導入による「不要な人手の削減」、情報セキュリティを担う「必要な人材の確保」、そしてテレワーク推進などによる「CO2排出の削減」。これらを実現させていくことでSDGsを達成し、豊かで活気のある未来を目指しましょう。