ITの発展に伴い、同じように急速に世界で取り組まれている動きがあります。それが「ITAD」です。
ITADは、
- IT=Information Technology(情報関連機器)
- A=Asset(資産)
- D=Disposition(廃棄・処分・除却)
の頭文字の略で、古いIT機器をリユース、リサイクルし、環境への影響を軽減する動きです。Google、Amazon、Apple、Meta、Microsoftといった5大IT企業があるアメリカを始め、海外では当たり前のように考えられている動きでもあります。
今回は、まだ日本では聞き馴染みのない「ITAD」についてお話ししていきましょう。
ITADとは
ITADとは、古いIT機器のリユースやリサイクルを行うことです。ITの発展に伴い、スマホやパソコン、サーバなどのIT機器の生産数、廃棄量も共に増えています。さらに、この増加しているIT機器を処分する際にはいくつかの問題があり、日本ITAD協会(JITAD)では、より安全・安心をテーマにITAD業界の発展を目指しています。では、どんな問題があるのかを具体的に見ていきましょう。
①IT機器に含まれる様々な情報の適正な抹消措置(データ消去・破壊など)
今では一人一台は持っているのが当たり前にまで普及しているスマホ。そのスマホの中には今までの思い出の写真や、個人の連絡先など多くの情報が保存されていると思います。その情報が漏洩してしまう最も多い原因のひとつつがIT資産の誤った方法による破棄なのです。そのため、IT機器を破棄やリサイクルの際には適切な手順に則り、適正なデータ消去を進めていく必要があります。
適正な手順が示されたガイドラインも制定されていますが、ハードディスクやSSDなどの記憶装置の種類によっても適正なデータ消去の方法が異なってくることや、改定された総務省セキュリティポリシーに関するガイドラインでは、完了証明書などデータ消去の結果・証明を残すことが求められているなど、適正なデータ消去を行うには難易度が高いのが実情です。そんな問題を解決すべく、日本ITAD協会ではガイドラインに基づく適正処理を実施するためにインフラの整備や研修なども行っています。
②リユース、リファービッシュなどによる適正な再流通の仕組みづくり
次の問題点は、適正にデータの消去処理が行われたIT機器のリユース、リファービッシュを行う仕組みづくりです。ちなみに「リファービッシュ」とは、「整備・修復された、改修された」という意味があり「整備済製品」「整備された中古品」のことを差します。
使用しなくなったIT機器をできるだけ多くリユースやリファービッシュなどを行う流通環境は、日本では、まだ十分に整っているとは言えない状況です。新品のパソコンを廃棄しようとすると、約300キロ前後のco2が排出されると言われています。この量のco2の排出を防げるようになれば、環境への大きな貢献になるため、早期のIT機器の再流通の仕組みづくりが求められています。
③リサイクルによる再資源化、適正な廃棄(E-Waist)
リサイクルをする際には、環境省により制定されている廃棄物処理法にある各種リサイクル法を守った上で破棄を行うことが必要です。E-Waistと呼ばれている「電気電子機器廃棄物」やプラスチックごみなどの不法投棄が問題になっているのと同時に、IT機器に含まれている資源の回収も注力視されています。IT機器には、スチール、銅、アルミニウム、金、プラチナなど多くの貴重な金属が含まれていて、リサイクルにはこれらの資源の回収も目的とされているのです。
ITADの日本の現状
環境に大きな影響を与えるITAD。近年世界でも注目が集まっている中で、日本ではまだITADという言葉を知らない方も多く、知っていたとしても「IT資産の処分である」というくらいの認知度なのが現状です。要因としては、IT機器を適切に処理しようとするとコストがかかるためということもありますが、多くは、ITADを実施することによるメリットなどをきちんと理解していない意識の低さによるものと考えられています。
ITADの海外の状況
まだ日本では認知や理解が低いITADですが、海外では一般的であり、取り組みも進んでいます。アメリカでは電子機器のリサイクルをより進めていくために、ボランティアグループにより定期的に改訂・更新されるルールが策定され、アメリカで電気電子廃棄物を処理する事業者は、廃棄処理施設を運営する際の法的要件の遵守や適切な環境安全管理システムによる証明などが義務付けられています。
また、アメリカでは2024年に1200人の参加者、100人以上の出店者、50人以上のスピーカーによるITADの大々的な講演会も行われる予定です。
アメリカの他にもカナダでは、電子廃棄物管理に特化した法律はありませんが、基準の制定や有害物質規制法を通じて電子廃棄物の規制に間接的に影響を与えていることや、州レベルでE-Waistに対する施策が制定されており、日本よりも取り組みが進んでいると言えます。
(出典:https://www.itadsummit.com/)
日本のITADの今後
E-Waistの問題や安全な処理の必要性を受け、ITAD市場規模は2021年で145億米ドルから2026年には212億まで成長すると予測されています。また、新技術の導入などにより日本でも今後市場は大きく拡大していくことでしょう。
(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000071640.html)
まとめ
まだまだ海外に遅れをとっている日本ですが、今後環境を守っていくためにも世界的に取り組む必要があるものがITADです。私たちひとりひとりが情報を敏感に捉え、環境保全に意識を向けていくことが地球を守っていく上での一番の近道なのかもしれません。